診療科目

アルコール依存症について

依存症とは?

アルコール依存症は、飲酒をコントロールできなくなり、体や社会生活に悪影響が出るにもかかわらず、自分の意思で飲酒をやめられなくなる病気です。多量の飲酒を続けることで脳に障害が起き、自分の意思ではお酒の飲み方(飲む量、飲む時間、飲む状況)をコントロールできなくなります。

はじめのうちは、快楽を得るために飲酒しますが(正の強化)、次第にイライラや抑うつ、 不眠といった不快感が強くなり、不快を避けるために飲酒
を続けるようになります。やがて飲みたいという欲求が抑えられず、他の事より飲酒を優先したり、飲酒量が増えることで心身に影響をきたします。

依存症とは?

アルコール依存症の特徴

アルコール依存症には精神的な依存と身体的な依存があります。

精神的な依存

強い飲酒欲求とそれに基づくコントロールのきかない飲酒が特徴です。具体的には次のような症状が見られます。
•お酒を飲むべきでない時にも「飲みたい」と強く思う
•飲む前に思っていた量より、飲み始めるとつい多く飲んでしまう
•いつも手元にお酒がないと落ち着かない
•数時間ごとに飲酒する「連続飲酒」をする

身体的な依存

アルコールが常に体内にある状態が続くと、脳はそれを普通の状態と認識し、アルコールが抜けると様々な不快な症状が出ます。具体的には、次のような離脱症状(禁断症状)が出ます。
•手のふるえ、多量の発汗、脈が早くなる、高血圧、吐き気、嘔吐、下痢
•イライラ、不安感、うつ状態、幻聴、幻覚
これらの離脱症状を抑えるために再び飲酒してしまいます。

体に現れるダメージ

アルコール依存症は、肝炎や脂肪肝、膵炎などの疾患や、生活習慣病、消化器系のがんなどの原因となります。世界保健機関(WHO)によると、
アルコール依存症は60以上の病気や外傷の原因になるとされています。

依存症の治療

心に現れるダメージ

アルコール依存症は、うつ病、不安障害、パニック障害などの背景に存在することがあります。特に、「連続飲酒」と「離脱症状」はアルコール依存症の典型的な症状です。

依存症になりやすい要因

アルコール依存症にはいくつかのリスク要因があります。例えば、若い頃から飲み始めることや、母親が妊娠中に頻繁に飲酒していたことが影響します。また、家族にアルコール依存症の人がいる場合や、うつ病や不安障害など他の精神疾患がある場合もリスクが高まります。さらに、周囲が飲酒に寛容な価値観を持っている環境で育つことも影響します。

初期から中期の症状

初期から中期の症状としては、飲みすぎた翌日に気分が落ち込んだり、イライラしやすくなることがあります。「あと一杯だけ」と思っても止まらず、何杯も追加して飲んでしまうこともあります。休みの日に昼間から飲酒を始め、やるべきことができないことや、飲酒後のだるさがつらくてまた飲んでしまうこともあります。飲酒すると気が大きくなり、暴言を吐いたり、人とトラブルになることもあります。また、家族から飲酒について指摘されることを嫌い、隠れて飲むことや、飲み過ぎて記憶を失くす(ブラックアウト)ことがあります。二日酔いが辛くて仕事に遅刻したり、欠勤することもあり、酒癖の悪さから離婚問題に発展することもあります。お酒代を得るために借金をすることもあります。

末期症状

アルコールは脳の働きを麻痺させ、特に理性を司る前頭葉が障害を受けます。長期にわたる大量飲酒は脳を委縮させ、アルコール性認知症を引き起こします。代表的なものにコルサコフ症候群があります。この病気はビタミンB1の欠乏によって起こり、見当識障害や記憶障害、周囲への無関心といった症状が現れます。早期に治療を開始すれば、ある程度脳の機能は回復しますが、放置すれば全般的な認知症に至る可能性があります。

アルコール依存症

不眠とアルコール依存症

人が抱える困難や苦痛を緩和するために物質の使用を繰り返すと、その物質使用に依存するようになります。これを「自己治療仮説」と呼びます。不安や不眠をもたらす脳神経の興奮を抑えるためにアルコールを乱用することも、この仮説に基づけばアルコール依存につながります。アルコール依存症を持つ人にとって、お酒をやめた直後だけでなく、断酒後数ヶ月に渡って不眠が続くことがあります。不眠が続く人ほど、一度お酒をやめても再開するリスクが高く、もともと不眠症があった人の方が、飲酒を続けているうちに不眠が生じた人よりも、断酒を続けにくいことが報告されています。

お酒のうつ病

飲酒がうつ病や不安障害を引き起こしたり、抑うつ気分を悪化させたりすることがあります。アルコール依存症とうつ病や不安障害との間には高い併存率が見られ、多くの報告で示されています。アルコールには一時的に不安を和らげる効果がありますが、酔いが覚めるとその反動でさらに強い抑うつや不安を感じてしまいます。

家族や職場への影響

アルコール依存症は、患者本人だけでなく、家族や職場にも深刻な影響を及ぼします。家族は経済的問題や暴力に直面し、職場では欠勤や仕事上のトラブルが増えます。患者は飲酒関連の問題が起きても、自分に都合よく考えて反省しなくなるため、周囲の支えと専門的な治療が必要です。

治療方法

STEP1

診察

患者さんご本人やご家族からお話をうかがい、心身の状態を調べ、治療の方針を決めていきます。患者さん自身が、主体的にアルコール問題に取り組むことができるよう、治療目標や治療プログラムの選択について等、ご本人の希望を治療方針に反映させていきます。なお、必要に応じてお薬を処方します。

STEP2

断酒治療 または 減酒治療

STEP3

患者様のご意向を大切にしていきながら選択していきます。

  • 断酒治療が合う方

    ・お酒をやめなければと思っている方
    ・飲酒によるトラブルを繰り返しお困りな方
    ・離脱症状(手の震え・発汗・不眠・イライラ・うつ症状等々)で、お困りの方
    ・お酒で体調を崩し入院された方

  • 減酒治療が合う方

    ・健康診断で肝臓や膵臓の検査データが気になる
    ・飲酒による失敗でお悩みの方
    ・ついつい飲みすぎてしまう方
    ・飲酒を減らしたいなと感じている方
    ・断酒が必要だけれど、断酒に踏み切れない方

STEP4

病状やお困りごとの内容やご希望に合わせて、以下の治療の選択肢があります。

  • 断酒治療の内容

    ●診察/薬物療法
    断酒補助薬・抗酒薬・離脱症状を抑える薬・眠剤・安定剤などを処方します。

    ●解毒治療
    点滴を行い、アルコールの毒を抜きます。離脱症状を抑え、心身の休息や安定を図ります。

    ●個別相談
    専門医療スタッフが断酒について、断酒記録などを活用し、お悩みごとをうかがいながら支援します。

    ●アルコールセミナー
    本人・家族・関係者を対象とし「アルコール依存症とは何か、どう対処すればよいのかの基礎知識」を学ぶ講義形式のプログラムです。※土曜日セミナーは本人のみになります。

    ●アルコールデイケア(週1から参加可)
    断酒をサポートするためのリハビリテーションプログラムを実施しています。習慣化された飲酒をデイケアに通うことで、生活リズムを整え断酒をしていくための心理教育やグループセラピーを実施しています。

    ●アルコールリワーク
    アルコール問題を持つ休職中の方が、復職し、再発せずに仕事を続けていくことを支援するプログラムです。

    ●自助グループの紹介
    アルコール依存症の自助グループ(断酒会やAA)についてご説明・ご紹介をします。

  • 減酒治療の内容

    ●診察/薬物治療
    飲酒量低減薬・眠剤などを処方します。

    ●アルコールセミナー・土曜日セミナー
    本人・家族・関係者を対象とし「アルコール依存症とは何か、どう対処すればよいかの基礎知識」を学ぶ講義形式のプログラムです。※土曜日セミナーは本人のみになります。

    ●個別相談 専門医療スタッフが断酒について、減酒記録などを活用し、お悩みごとをうかがいながら支援します

    ●アルコール・ハームリダクションプログラム
    お酒にまつわる苦労や困難の減らしていくプログラムです。お酒の減らし方なども考えます。

    ●アルコールリワーク
    アルコール問題を持つ休職中の方が、復職し、再発せずに仕事を続けていくことを支援するプログラムです。

    ●様々なニーズにあったプログラム
    女性のためのグループなど、様々なニーズに合ったプログラムがあります。

  • 断酒治療について

    断酒継続をサポートし、飲酒によって生じてきた身体的・精神的・社会問題の回復をすすめていきます。※連続飲酒や重度の離脱症状

  • 減酒治療について

    飲酒量を減らすサポートをします。飲酒による問題を知り、飲酒を減らす方法を身につけます。また、飲酒にまつわる苦労や困難を改善していきます。

心身の不調を感じたら、ひとりで悩まずに、どうぞお気軽にご相談ください。どんな些細なことでも構いません。
「こんなことを相談してもいいのかな?」と思ったときこそ、ご連絡をお待ちしています。
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