我々は生きていくうえで数多くのストレスにさらされますが、現代は複雑な社会情勢や環境変化などにより一層ストレス度が強まり、こころの健康が脅かされる状況にあります。
厚生労働省が2011年に従来の「4大疾病」に対し、新たに精神疾患を加え「5大疾病」とする方針を決めたことからも、精神科医療に対する需要が高まっていることがうかがえます。
当院はアルコール依存の専門的治療が出来る稀有なクリニックとして有名ですが、
それだけでなく、非薬物療法を希望される患者様のニーズにお応えできるようカウンセリング療法に力を入れている点やアルコールデイケアに加え、復職支援プログラム(リワーク)をはじめとする様々なデイケアプログラムを提供できる点でも特徴的なクリニックだと思います。
インターネット上さまざまな情報が氾濫している昨今、メンタルクリニックを含めた精神科医療に対する強い不安や抵抗があるかもしれませんが、当院を受診されることにより正しい知識を持って頂き、皆様の気持ちに寄り添い専門的な視点から診断・治療のご提案が出来ると信じております。
『白峰に来て良かった!』と感じてもらえる医療を目指し、スタッフみんなが力を合わせて頑張っています。
何かお困りのことがございましたら、どうぞお気軽にご相談下さい!
バッハの「ゴールドバルク変奏曲」という曲は不眠症に悩んでいたある伯爵が眠れるよう曲を作ってほしいと依頼して作られたそうです。
はたして伯爵がこの曲を聴いて眠れるようになったかどうかはわかりませんが、この曲は私の大好きな曲で聴くたびに新しい発見と感動があるので、かえって眠れなくなってしまいます。
ライフスタイルの多様化や仕事、人間関係のストレスなどもありわが国の成人の5人に1人は睡眠に何らかの問題を抱えているといわれます。最近よくテレビや雑誌などでいろいろな快眠グッズや快眠法などが取り上げられていますが、それだけ不眠に悩み良質な睡眠に対する関心が高まっているといえます。
人は人生のほぼ3分の1もの時間眠っています。睡眠は脳や体の疲れを取り心身の健康を維持するために必要ですが、さらに日中の活動で脳に入ってきた膨大な情報を整理し記憶する働きもあります。実験により睡眠により記憶力や運動能力が向上するという報告もあります。今までは睡眠時間を削って仕事や勉強に回していたとしたら、今後は逆にしっかり睡眠をとって仕事や勉強の効率を上げるということが大切になると思われます。
体内時計は地球の自転に合わせてリズムを刻んで体のさまざまな生理機能に深く関与していますが、24時間よりやや長いため睡眠覚醒リズムが次第にうしろにズレてしまいます。
不眠症の治療ではまず生活習慣や睡眠環境などの改善や調整を考えます。睡眠障害の対処12の指針というものがありますので、参考にして頂ければと思います。
【睡眠障害対処12の指針】
(厚生労働省 精神・神経疾患研究委託費睡眠障害の診断・治療ガイドライン作成とその実証的研究班、平成13年度研究報告所より)
1. 睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分
睡眠の長い人、短い人、季節でも変化、8時間にこだわらない
歳をとると必要な睡眠時間は短くなる
2. 刺激物を避け、眠る前には自分なりのリラックス法
就床前4時間のカフェイン摂取、就床前1時間の喫煙は避ける
軽い読書、音楽、ぬるめの入浴、香り、筋弛緩トレーニング
3. 眠たくなってから床に就く、就床時刻にこだわりすぎない
眠ろうとする意気込みが頭をさえさせ寝つきを悪くする
4. 同じ時刻に毎日起床
早寝早起きでなく、早起きが早寝に通じる
日曜に遅くまで床で過ごすと、月曜の朝がつらくなる
5. 光の利用でよい睡眠
目が覚めたら日光を取り入れ、体内時計をスイッチオン
夜は明るすぎない照明を
6. 規則正しい3度の食事、規則的な運動週間
朝食は心と体の目覚めに重要、夜食はごく軽く
運動習慣は熟睡を促進
7. 昼寝をするなら、15時前の20~30分
長い昼寝はかえってぼんやりのもと
夕方以降の昼寝は夜の睡眠に悪影響
8. 眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに
寝床で長く過ごしすぎると熟睡感が減る
9. 睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意
背景に睡眠の病気、専門治療が必要
10. 十分眠っても日中の眠気が強いときは専門医に
長時間眠っても日中の眠気で仕事・学業に支障がある場合は専門医に相談
車の運転に注意
11. 睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと
睡眠薬代わりの寝酒は、深い睡眠を減らし、夜中に目覚める原因となる
12. 睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全
一定時刻に服用し就床
アルコールとの併用をしない
《文献》
内山 真:睡眠障害の反応と治療ガイドライン(株)じほう、2002
上島国利、三村 將、中込和幸、平島奈津子:EBM精神疾患の治療2006-2007、中外医薬社、2006
ポイントはあまり早寝や寝る時間にこだわらず眠くなったら布団に入るようにしたり、夜中目が覚めてどうしても寝付けなかったら寝室から出て眠気が出てきたら戻るようにするなどして、できるだけ眠れずに布団の中で悶々と過ごす時間を減らすようにすることです。
そのかわり眠りが浅くても起床時間は毎日同じ時間にして睡眠のリズムを定着させます。
また普段の睡眠状況を「見える化」するために、毎日の入床時間、入眠時間、中途覚醒の時間、起床時間などを睡眠表に記入し、睡眠習慣の改善に向けて使うことも有効です。治療にも役立ちます。
睡眠薬は薬効が持続する時間によって分けられています。またメラトニンの受容体に作用して、体内時計を整えるタイプや程度、ライフスタイルなど様々な要因を考える必要があります。
また薬の依存や離脱症状のこともあるため、薬は処方通りに用法、用量を守り、服薬とともに先程お話した生活習慣や環境の改善を行い、不眠症が改善したら薬を減薬・休薬するのが治療のゴールになります。
どんな睡眠薬を使っても、自然の良好な睡眠の質にはかないません。睡眠に悩んでいる方は、どんな事でもまずご相談ください。
その代表的な方法として、漸進的筋弛緩法、呼吸法、自律訓練法等が挙げられます。さらには、過去の体験に基づき、患者様独自の方法を行っていただくこともあります。例えば、以前行っていた趣味を再開する、休息時間を一日の予定に組み入れておくといったようにです。
ただ、最近のサラリーマンの方の状況を見ると、早朝から深夜までの勤務を行い、休日をとることすらままならない方も時折いらっしゃいます。そのような場合、勤務時間や仕事場にリラックス法を取り入れるよう、ご提案します。業務の合間の時間に外の空気に触れたり、デスクに好きなフィギュアや写真を置いたり、さらには、文房具をお気に入りの物に替えていただいたこともありました。
リラックス法の練習を自宅でしたり、オリジナルの方法を一緒に検討していると、患者様の表情が和らいできます。ご自身で様々な方法を見つけられるようになり、友人や家族と一緒にできることにも思いが及ぶようになります。
激務に耐えられるようになる魔法の方法ではありませんが、ストレスや緊張を解消し、今の生活を見直す余裕を取り戻すのに、リラックス法が役立ちます。ご自身一人で上手くいかず精神不調をお感じになる際には、当院をご利用下さい。